幼稚園・3歳児健診の検尿は何をみるの?

幼稚園・3歳児健診にはどうして検尿があるの?

  • ・幼稚園・3歳児検診の検尿は生まれつきの腎臓病である「先天性腎尿路異常」や慢性糸球体腎炎といった腎機能に影響がある病気を早期に発見することが目的です。
  • ・健診の尿検査で引っかかり受診をすすめられた場合は、詳細な尿検査を中心とした精査をかかりつけ医で受けるようにしましょう。受診までの間、食事や運動の制限は基本的には必要ありません。
  • ・精密検査の結果、定期的な検尿フォローや小児腎臓病専門施設への受診が必要となる場合があります。

幼稚園・3歳児検尿の目的は?

幼児期の集団検尿は3歳児健診の際と幼稚園の健診で行われます(幼稚園の健診における検尿は決められたものではなく、園ごとの判断で行われます)。

集団検尿の目的は、腎臓の機能が悪化する恐れのある病気を早期に発見し、介入することで腎機能の悪化を阻止する事です。

腎臓の病気は初期に尿異常以外の症状が出ることが少なく、尿以外の症状を自覚したり認めたりする際には腎機能悪化が進行している場合があります。

尿検査でスクリーニング(目的の病気を持っている、発症が予測される患者をふるい分けて発見すること)することが早期発見につながります。

では、幼稚園・3歳児検尿で発見される腎臓の病気とはどのような病気でしょうか。

一つは生まれつきの腎臓の病気である「先天性腎尿路異常」です。

小児期に腎機能が悪化(腎不全)し、透析などが必要な子ども達は決して多くはありませんが、子どもにおける腎不全の原因は2/3が先天性腎尿路異常と言われています。

3歳児検尿の主目的は、将来的に腎不全となりうる先天性腎尿路異常の発見にあります。

一方、小学校以後の学校検尿の主目的は何らかの原因で腎臓に炎症を起こす慢性糸球体腎炎の早期発見です。

幼稚園健診での検尿は3歳児検尿と学校検尿の移行期ですので先天性腎尿路異常と慢性糸球体腎炎の発見を目的としています。

3歳児健診・幼稚園の検尿ではどのような検査を行うか?

3歳児健診・幼稚園の検尿は全国で画一化された検査ではなく、地域ごと(園ごと)の検査となっています。

多くは学校検尿に準じた検査を行っており、尿試験紙法(定性法)で尿潜血と尿蛋白の有無を確認しています。

定性法では試験紙を尿に浸し、尿潜血と尿蛋白について試験紙の反応(-、±、1+、2+、3+)を確認します。

3歳児検尿では蛋白±以上の反応を陽性基準としている場合が多いです。

過去の調査では、3歳児検尿を受けた子どもの約1-4%で尿蛋白陽性となると報告されています。

尿潜血については血尿のみ単独で陽性となる子どもから緊急性のある疾患が見つかる頻度が低いのに対し、尿潜血が見つかる頻度が8%程度と多いことから日本小児腎臓病学会による『小児の検尿マニュアル』では必須項目とされていません。

しかし、8割程度の自治体が尿潜血も検査項目としており精査を薦められる場合がありますので、その際は一度医師へご相談ください。

幼稚園検尿については尿潜血1+以上、尿蛋白±以上を陽性基準にするように上記マニュアルで薦められていますが、園によっては一律±を基準としている場合もあります。

幼稚園検尿のデータは文献でもあまりまとめられていませんが受けた子どもの約1-4%程度に尿蛋白や尿潜血が見つかると言われています。

幼稚園・3歳児健診の検尿異常が見つかったらどうすればいいのか?

日本小児腎臓病学会による『小児の検尿マニュアル』では2回の検尿で尿蛋白・尿潜血の陽性判定が出た子どもに対し、まずはかかりつけ医で3次の精密検査を行うことを薦めています。

3次の精密検査として以下の内容の検査を必要に応じて行います。

  • 問診:過去の腎臓病の既往、元々の病気、家族の腎臓病の有無など
  • 診察:身長、体重、血圧測定、浮腫の有無などを含む
  • 詳細な尿検査:赤血球や蛋白など実際の数値を検査します
  • 血液検査:腎機能やアルブミン(蛋白の一種)、糸球体腎炎に関連のある免疫の数値など

尿潜血のみの場合は、診察や尿試験紙法の再検査などから検査を始める場合もあります。

精査の結果、尿蛋白や尿潜血を認めた場合はどの程度の尿蛋白、尿潜血で他にどのような異常があるかがキーポイントとなります。

軽度の尿蛋白・尿潜血はどのぐらい持続するのか、時間の経過で増加していくかが大事なので定期的に尿検査の確認や身体診察を行います。

また、必要に応じて超音波検査を行うこともあります。尿蛋白が持続した場合、高度尿蛋白や腎機能低下を認めた場合は先天性腎尿路異常や慢性糸球体腎炎といった腎疾患の可能性が考えられるため小児腎臓病専門施設へ紹介を行います。

最初の3次の精密検査はクリニックで行うことが可能なことが多いため、まずは医師へご相談ください。

また、腎臓の病気というと食事や運動の制限が必要であるというイメージがあるかもしれません。

しかし塩分や蛋白質、運動は子ども達の成長にかかせないものであり、腎不全の子ども達でも医師の指導のもと適切な量を取ることが必要です。

健診で検尿異常を指摘されて受診を薦められた子どもは、診察まで通常通りの生活・食事で問題ありません。

受診後についても、小児腎臓病専門施設へ緊急受診が必要と判断される子ども以外は通常の生活で問題ありませんが、食事や運動についてご不安がありましたら担当の医師にお尋ねください。

現在の幼稚園・3歳児検尿における問題点は?

検査の説明でお話ししたとおり、園ごと、地域ごとの検査となっているという問題点が第一に挙げられます。

健診で検尿異常が指摘された小児に対する対応については日本小児腎臓病学会が『小児の検尿マニュアル』の元、画一化された対応を行なうことが多いです。

もう一つの問題点としては、3歳児健診における目的の一つである「先天性腎尿路異常」を発見するためのスクリーニングとして、尿蛋白、尿潜血の検査だけでは力不足であるという点です。

全国調査である程度の腎機能障害を小児期にきたすような「先天性腎尿路異常」は3割が出生前や出生直後の超音波検査を契機に、1割が小学校以降の学校検尿を契機に発見されているのに対して、3歳児検尿の異常が契機となっているケースは3.2%にとどまっているという報告があります。

小児腎臓病学会を中心に尿試験紙法の追加項目の検討や、『小児の検尿マニュアル』の普及がすすめられています。

健診の検尿異常に限らず子どもの腎臓病についてご不安がありましたらまずは医師へお尋ねください。